人々から忘れられていた古代調味料
山本 省三 氏
平成15年度 現代の名工 受賞
平成18年度 黄綬褒章受賞
厚生労働省職業訓練指導員
日本古代の調味料は宮中の天皇の召し上がる、大床子の御膳を見るとよく分かりますが四種器と言う銀の器に「酢・塩・酒・醤(ひしお)」の四種類が入っていました。当時は食材そのものが高盛りされていたので、自分で好きな物を取って、この四種の調味料を使って食べていました。
この中において私が最も注目した調味料が
醤(ひしお)でした。
他の三種は現在も容易に入手する事ができますが、醤(ひしお)は難しいです。なぜ現代において醤(ひしお)を入手するのがこれほど困難なのか?・・・
その答えを探し古の文献を読みふけり、ついにその答えを見つけました。
醤(ひしお)は、醤油と味噌の原型となった調味料だったのです。
醤油と味噌が普及していくにつれ、醤(ひしお)を調味料として使用する習慣が無くなり、やがて製造方法を伝授できる人も徐々にいなくなりました。
いつからか醤(ひしお)は人々から忘れられた幻の調味料となっておりました。
この事実を知った際、料理人としての血が騒ぎ出しました。
醤(ひしお)をこの手で復活させる事が使命だと感じ、現在は存在しない古代調味料を再現するべく、その日より試行錯誤の日々が始まりました。
足し算ではなく、引き算によって完成しました
醤(ひしお)の製造風景
人の目で発酵具合を確認しながら、
じっくりとかき混ぜて「醤(ひしお)」の旨味を引き出します。
製造方法を知っている方はもちろん、文献にも詳細な部分は記載されておりませんので、最初の頃はまるで雲を掴むような作業でした。調理場に味噌・醤油類を入れた仕込樽を5~6個並べ、悪戦苦闘の日々が続きました。
しばらくして気が付いた事は、醤油と味噌の原型ならば現在の醤油・味噌から余計なもの除いていくのが一番の近道なのではないか・・・という事でした。
新しい味を作る際には、複数種類の調味料を合わせて作るのが一般的です。そこから考えると醤(ひしお)の製造過程は全く逆転の発想です。
正に
引き算によって完成した調味料です。
平成20年に開催された全国発酵食品サミットin横手にて試作品発表して以来1年がかりで今年2月の第1回目の仕込みで完成し、この度ようやく製品化にこぎつけました。
原材料には秋田県産の大豆と小麦を使用し、自然発酵の力によって完成した
無添加調味料です。完成するまでには、数ヶ月の発酵期間を要します。
古代の製法をそのままに、添加物は一切使用せず地元の原料のみを使用し再現できたことは非常に嬉しく思っております。
どんな料理にも使える万能調味料です!
貴醸醤 平安の風
左側が火入れタイプ (1ℓ入)
右側が(生)タイプ(500mℓ入)
どんな料理にも使える万能調味料
今回再現した貴醸醤(きじょうひしお)平安の風は2つのタイプがございます。
1つは完成した醤(ひしお)に火入れ処理を行い、発酵を止めたタイプ。
もう一方は火入れを行わず、発酵し続けている生(なま)タイプです。
火入れ処理を施した方が、生よりも濃いめの味になっております。
一般の方が使用するのには、こちらの火入れタイプがオススメです。
生タイプは火入れタイプに比べ香りの良さと風味が際立ちます。
そのまま、冷やっこ・お浸し等に使用できますし、希釈して味付けご飯や煮物などにも相性抜群です。
生(なま)タイプにつきましてはプロの料理人の方向けです。火入れタイプより少し薄い印象で、より醤油とも味噌ともいえない味が特徴です。
和食のみならず、パスタやステーキ等、幅広くご利用いただけます。
色々な角度から見ていただき貴店、料理人様独自の味をお出し下さい。